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保育園での『箱庭あそび』

『箱庭あそび』は、箱庭用具のセットを、保育園の子どもの遊び道具の一つとして利用する遊びです。保育教諭(保育士)と子どもの一対一での遊びになるので、短い時間ですが子どもは喜びます。慣れている場所(保育園)で、慣れている人(よく知っている保育教諭/保育士)が一緒なので、安心して遊び、自分の気持ちを作品に表現していきます。『箱庭あそび』を通して、いらだちや心配、不安、緊張など、子どもの気持ちの原因を知るための介在の道具になります。

「わたし、しゃべったよ」 ~かん黙症状の子どもの事例~ 栃木県小児科医

 かん黙の症状で、診察に来ていた女児との体験です。彼女はモノづくりが好きで、自宅でも、黙々と粘土の人形などを作っているような子です。数回の面接でもなかなか話すことがなく困っていたところ、“かん黙の子どもに即効性がある”と箱庭を勧められました。
 早速箱庭を取り入れ、彼女との交流を図ることにしましたが、「即効性があるとはいえ、何回かのセッションは必要だろうな」と考えていました。
 初回のセッションが始まりました。彼女には「好きに作っていいからね」と声をかけ、作品を作ってもらいます。モノづくりが好きな子だけあって、黙々と作品を作っていました。「作品作りが何かのきっかけになってくれたらいいな」と思いつつ見守っていたところ、彼女が突然「先生、先生に何か作ってあげたいんだけど、先生は何が好き?」と話しだしました。初回だし、特に期待をしていなかったので、何が起きたか分からないくらいびっくり! 彼女の発語をきっかけに、その回のセッションは会話をすることができました。
 私としても、正直それほどの即効性があると思っていませんでしたので、「箱庭ってすごい!」と感動しました。あまりにも驚いて、箱庭を勧めてくれた方に、セッション終了直後にお礼の電話を入れたくらいです。
 今回の体験で、“ 箱庭を作ることは、子ども達の心を和らげる”と証明された気がします。今後も折につけ箱庭を活用し、研究していきたいと思っています。

前学童期の『箱庭あそび』の利点

『箱庭あそび』は、自分の気持ちを言葉でうまく表現できない“ 前学童期” の子どもに最も適しています。
かん黙の子どもに即効性があります。
子どもが作った箱庭作品、箱庭を挟んでの会話から、虐待の察知ができます。(察知により、虐待の負の連鎖の断ち切りを目指します)
発達障害と診断された子どもが作った作品には、障害ではなく、個性が表現されます。大人が理解することで、〈障害〉として捉えていた症状を、その子の個性として捉え直すことができます。
子どもを理解できずに困っている保護者に、箱庭を介し、子どもの気持ちを通訳できます。

「気になる子どもの作品」と、箱庭に表現される感情

下の図は、園での子どもの気になる状態と、感情の分類、感情がどのように箱庭作品に表現されているかの一例です。


園での気になる点
①情緒の不安定(いらだち、すぐキレる、すぐ泣く)
②問題行動(多動、反抗、危害行動)
③気を遣う、顔色をうかがう、確認行為
④心身症(チック、吃音、かん黙など)


→ 実際の作品例
①家庭内の場面で人形を置かない、あるいは自分はいない(孤独を感じさせる)。
②自分を表す人形と、親を表す人形の位置関係が離れている、あるいは極端に近い(近い場合は願望?)。人形の代わりに動物で表現する場合もある。
③きょうだいがいない(例えば赤ちゃん)、或いはきょうだいの死の表現。
④親の別居、離婚、内縁などを表現する言葉、場面。
→ 実際の作品例
①戦いの場面の作品(誰の言葉、誰の行動にいらだつのか? )。
②残虐な言葉、いら立ちの言葉を添え人形などを埋める。
③砂箱の中でなく、外にも作品を作る。
→ 実際の作品例
①確認をしながら、砂が付くのを気にしながら遊ぶ。周囲の声等に敏感。心身症の子ども。
②砂に文字を描いているだけ。
③終われば、自らさっさと片付けて、砂をきれいにならす。
→ 実際の作品例
①囲いを作って、その中にミニチュアを入れ、閉じ込めている。
②ひとつの人形(動物)を複数の人形(動物)が囲んでいる。
③泣いている人形が自分、或いは家族の誰か(例えば母親)である。

参考資料

前学童期(3~5歳)の子どもの箱庭遊び(2018-07-25・289KB)

※虐待防止学会で発表された資料です。

虐待の発生予防のためのチェックシート(2018-07-25・142KB)

プリントしてお使いいただけます。
 
※このチェックシートは、厚生労働省の資料の一部です。

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